たったの数日ほどの弾丸海外旅行だったのでかなりバタバタしていたが、のんびりした時間がなかったわけでもない。
短い時間を有効に活かしつつも、その忙しい中の少しの合間にも絶え間なく流れる南国感が心を落ち着かせてくれる。リゾート感あふれる雰囲気がマニラの都市部の雰囲気とは全然違うので、すごく馴染む。ええわ〜。海岸沿いの夕日も朝日も見れる。ボラカイ島はひょうたん型の島で、真ん中あたりの国土のせまい部分は西側ビーチから東側ビーチまで歩いて10分くらいなので、朝日夕日見放題。毎日。
旅先で朝日と夕日を見るとすごくのんびりした気分になる。日本を出てみる景色はなんだか自由を感じる。安心している。
ノリでフィリピン行きを即決したものの、4日しか休みが取れなかったこともあり、乗り継ぎはバタバタ。日本からフィリピン・マニラへ。更にマニラから、ボラカイ島の最寄り空港まで飛行機で。そしてその空港近くの港から最後は船に乗りボラカイ島上陸。
太陽燦々輝くボラカイ島の港に着いてすぐにタクシーに乗り込む。車窓からみる町並みや山並みが全く見慣れないことに高揚する。バタバタ移動しながらも新鮮な景色を楽しんでいると間もなく目的地Area 51へ。
ゲートから中に入るとすぐにジャックとティーの両人が笑顔で出迎えてくれた。会ってすぐに雰囲気でわかったが、ふたりとも名実ともに兼ね備えた地元著名人で、なんだか余裕が感じられた。
ANTENNAの店長に「行ってみなよ」と言われて、なんか即答で、「はい行ってみます」とこたえて、あっという間に南国に。ジャックとティーの二人に関しても、「ANTENNAでパーティやったフィリピンのDJ」という情報のみで、数回メッセンジャーでやり取りした程度。
会ってみると、二人とその一族は完全に成功者だった。
ともあれ、どーもどーもとすぐに一本まわしてご挨拶。テクノ好きに悪い人間はいない。初めましてだろうがなんだろうが、まわしてからサウンドシステムの話でもすれば、あっという間に打ち解ける。
あまりにもいい場所バイブスですでに心ウキウキ。ボラカイ島に来て早々にこのパーティは楽しいだろな、とすでに予感させてくれていた。
すこしパーティスペースの昼の顔を堪能してしっかりと動画に収めてから、ジャックの運転でバイクで宿へと向かった。宿への道も心地よかった。
ちなみに、中心地繁華街の道はラッシュ時はこんな交通状況。なかなか日本人にはすんなりと受け入れられない。
前編に書いたのは初日の夜のドタバタ。
その翌日の夜がパーティ本番。ドタバタと初日の夜を長めに楽しんだので、少し遅めに起きてからゆっくりボラカイを堪能しているともう夕方に。皆でディナータイムをしっかりと楽しんでから、ゆっくりとArea 51へむかう。
ジャックにとってもティーにとっても毎月二回定期開催の地元パーティであり、二人はパーティ直前でも全く気負いもなく自然体そのもの。毎回数百人集めているのが彼らの日常なのだなあと羨ましく思った。
月にフライヤー100枚とか?くらいまくだけだって。あんまり覚えてないけど、集客ってそれくらいだと。それくらいを効果的に良き店舗に配置すれば、月に2回は数百人よべるパーティ開けるらしいす。すごいす。
なんだか期待がいやがおうにも高まってくるが、兎にも角にも体感してみないとわからない。それがテクノパーティ。人がどう感じたかとか何人集まってるとかどうでも良いことで、やっぱり実感しないとなんにもわからない。スピーカーの前で自分がどう感じるかがすべて。良い音を鳴らして、音のひとつひとつに夢中にさせてほしい。
スタートは20:00ころから、宿で一日中プレイしていたDJ。
すこし不気味な、奇妙なミニマルサウンドからパーティが始まった。ゆっくりと会場に人が集まってくる。だけどまだ多くはない。バーカウンターに人が溜まりだすと、少しずつパーティの雰囲気が高まりだす。
その時間帯でもじっくりと独自の世界観をキープする彼のプレイは、このパーティはコマーシャルなものではないと宣言しているよう。トップチャートの曲が流れる種類のパーティではないよ、と。
スイートスポットで音を堪能しているとジャックが横に来て、「そうだな、この辺センターね」と。「でも00:00まわったくらいからアンプも徐々に全開出していくから」とニヤッと笑って、ごついやつを。ボラカイの人たちは重いのを好むようだ。しっかりその親切を胸いっぱいに受け止める。
地元の実力者たちとインターナショナルゲストが、その後もプレイを引き継ぎどんどんテンションをあげていく。テクノ。野外の電子音は最高。これ以外がどうでも良くなるくらい最高。
ピークにむけて徐々に音量が上がってきている。地鳴りのような低音と突き刺さる金属音。延々と続く。意味はない。たまらない。
まさにピークタイムに、ティーのDJにジャックのドラミングのコラボレーション。ハウスのグルーヴが、フロアをテクノとはまた違う雰囲気に染める。パーティはまだまだ終わらないというメッセージを、フロアの皆が受け取っていた。
とても自由で開放的。みんなで楽しく踊る。原始的で文化的。世界平和。
踊れなくなるまで踊ろう。
いま、この場を全力で楽しむ。
天候にも恵まれ、朝方少し雨が降ったものの、よりパーティが盛り上がる程度。
気にいったパーティはできるだけ最後まで付き合う。最後の一音がどう終わるのか聴き終わってから力尽きたいから。朝のアンビエント感をしっかりと最後まで聴き届けてDJたちにありがとうを伝えた。
ジャックとティーありがとう。
ANTENNAのケロさんありがとう。
朝日ってすごいなあ。グッとくるものがある。野外でテクノってすごいなあ。もう完璧に揃ってる。
少し海沿いをフラフラと歩いているといろんな人に声をかけられた。「あんた踊り過ぎじゃない?10時間くらい踊ってたけど」と。水をもらったりいろいろもらったりして。昨日はいっぱい頂いたなあ。
めちゃくちゃ楽しく踊ってると、良いタイミングでお酒をくれたりお水をくれたりなんなりしてくれる人が現れるのは、どこの国でも変わらないなと思った。
そこから眠る間もなく身支度を整え、港へ。
ジャックとティーと再開を固く約束して、船へと乗り込む。行きも弾丸。帰りも弾丸。別れを惜しむ時間もなく風のように帰国の途につく。そんなバタバタの中も、異国の風景は楽しみを与えてくれる。ゆっくりとその景色を楽しみながらもふと頭をよぎる事は、
「おれも海外の野外パーティでDJやるしかないやろ」
この日から僕の頭の中は、「海外・DJ」のことでいっぱいになった。